企業の文書管理を成功させるために必要な体制と維持方法

文書管理体制の改善
文書管理は「導入して終わり」ではなく、改善を続けることが不可欠です。
具体的には以下の取り組みが重要です。
✅文書管理を改善するために必要な取り組み
- 運用状況の定期的な点検と改善
- 全社員(職員)への教育・研修
- 主管部門と各部門の責任者の連携
こうした体制を整えることで、文書管理のルールが現場に浸透し、効率的な運用が可能になります。
紙文書管理の定期点検
紙文書管理は、ルール通りに運用されているかを確認するため、定期点検が欠かせません。
導入後3年間は年2回、それ以降は年1回程度の点検を推奨します。
主な定期点検項目を以下にご紹介します。
1. 全体的な管理状況の確認
什器が破損していないか、適切に文書管理が実施されているか、通路や非常口周辺に文書保存箱が放置されていないかなど目視で確認します。
✅主な点検項目
- 什器に破損はないか、什器の扉はスムーズに開閉するか
- 什器前に物品が置かれ、利用しにくくなっていないか
- 什器内にファイルが無理やり詰め込まれてないか
- 通路や非常口付近に文書保存箱が放置されてないか
- 機密文書は施錠管理されているか
- 破損したファイルサプライを使用していないか
- ファイル化されていない、バラの状態で放置されている文書はないか
- ファイル管理簿などにメタデータが正確に記載されているか
(ファイルタイトル、分類、保存期間、保存期間満了日、保存場所など) - 分冊したファイルや毎年作成するファイルのタイトルは、統一されているか
- 保存期間を過ぎたファイルが処分されないままになっていないか
これらの項目を確認して記録し、問題があれば該当する部門に報告して改善するよう伝えます。
2. 保存期間管理の運用状況
事務室保存と書庫保存が保存期間ルールに従って実施されているかを確認します。また、文書量の増減と収納スペースを調査して、現状の保存期間ルールに問題がないかを確認します。什器から文書があふれていたり、保存箱やバラ状態の文書が放置されていたりする場合は、次の原因が考えられます。
- 事務室内での保存期間の設定が長く、什器に収納しきれない状況になっている。
- 事務室内での保存期間は適切に設定されているが、ルールが守られていない。
1の場合は、保存期間ルールの事務室内での保存期間を短めに設定しなおし、文書保存庫への移動時期を早めるなどの見直しが必要です。
2の場合は、保存期間ルールの目的や具体的な運用方法などに関する教育・研修会を実施して啓発します。
特に近年、紙文書をスキャナで電子化して保存するケースが増えていますが、基本的にそのことによって保存期間が変わることはありません。電子化した元の紙文書は、法令やルールに基づいて廃棄する必要があります。
3. 登録データ・作業手順の確認
ファイル管理簿や文書管理システムへ登録したデータに、漏れや誤りはないかを点検します。登録漏れやデータの誤りがあると、検索した時にヒットしない(データを抽出できない)ために、存在するのに文書が利用できないなどの不具合が発生します。このような事態を避けるために、登録漏れや誤りを点検する必要があります。
ファイルの作成手順や配架方法、保存期間管理、利用(貸出しや閲覧)手続きなどが、作業手順(マニュアル)通りに実施されているかを確認します。作業手順通りに実施されない原因として、作業手順が周知されていない場合は、教育・研修を行います。作業手順そのものに何らかの問題(非効率、無駄など)がある場合は、手順を見直します。
4. アンケート・ヒアリングで現場の声を収集
原因を把握するには、社員(職員)にアンケートやヒアリングを行うのが有効です。アンケートやヒアリングでは、ルール通り実施されていない個所や問題点を明示し、“なぜできていないのか”、“どのようにすれば実施できるか”など質問して要望を聞き取ることで原因を明らかにします。
✅アンケートやヒアリングの項目例
- ルール通りに文書管理をしているか
- ルール通りに文書管理をしていないとすれば、それはなぜか(ルールを知らない、ルールが面倒など)
- 必要なときに必要な文書をすぐに利用できるか
- 利用できないとしたら、それはなぜか(保存場所が分散している、タイトルが統一されていないなど)
- 共用書庫の利用に際し、不便な点はないか
- 誤廃棄を防止する措置はとられているか
- 管理職に対し、社員(職員)に対する指導と監督はどのように行っているか
- 異動や組織改編にともなう事務の引き継ぎの際、文書も適切に引き継がれているか
これらのアンケートやヒアリングで、「ルールを知らなかった」、「ルールをあまり理解していなかった」などの回答が多い場合は、各種の教育・研修を実施し、ルールや手順の周知と啓発を行います。また、「手順が煩雑すぎる」、「効果的な方法が別にある」などの回答が多く手順そのものに問題がある場合は、文書管理検討会を開催し手順の見直しを行うことが必要です。
ルールの改訂と周知
組織変更、業務分担や業務内容の変更などにより文書分類基準や文書保存期間基準などの基本ルールが実情に合わなくなった場合は、現状に即した内容へ修正・改訂を行います。業種や職種によっては、法令の改正により法定保存期間が変更になるなど、基本ルールが改訂されることもあります。このようにルールが修正・改訂された際は、説明会などを開催して新ルールを周知すると共に、確実に新ルールが適用されているかを確認することが大切です。
まとめ
文書管理は、導入後の継続的な改善が成功の鍵です。
体制構築、教育・研修、定期点検を組み合わせることで、企業や組織の情報資産を安全かつ効率的に管理できます。
ぜひ本記事を参考に、文書管理体制を見直してみてください。
日本レコードマネジメントでは 情報管理コンサルティング事業を行っています。文書管理体制の構築や改善のご提案をはじめ、ナレッジマネジメント、情報コンプライアンスなど幅広い情報管理ニーズに対応してきた豊富な実績があります。さらに、文書の電子化や文書管理システムの導入支援なども行っております。情報管理に関するお悩みやご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
本記事は、当社広報室にて発信しています。




















